エルゴード仮説とユダヤの教え

昨日のブログで、全会一致は無効とする(イザヤ・ベンサダン的?)ユダヤの教えを紹介した。全会一致は無効!? - imakov’s blog

この教えは、物理学や数学でいうところのエルゴード仮説に似ていると思いませんか。エルゴード仮説というのは、「時間平均」が「アンサンブル平均」と一致するという仮定です。例えば、電球からの光の強度を測定することを考えます。測定器を1つ用意して、長時間観測してから平均値を算出すれば高精度に光の強度が測定できます。これが「時間平均」です。他には、測定器をたくさん用意して同時に測定してやれば、短時間の観測でも高精度に光の強度を測定できそうです。これが「アンサンブル平均」です。アンサンブルというのは標本集団という意味で、「アンサンブル平均」というのは「サンプルを採取して平均とりました」という意味です。(アンサンブル平均というとカッコいいっすよね。要は平均なのに。)

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昨日のブログで紹介した教えは、「人間は必ず間違うものだから、全員一致で結審するというのは、全員が間違っているということだ。(全員が正解していたら、人間が必ず間違うという前提が崩れてしまう)」というものでした。ここで、「人間は必ず間違う」というのが「長時間観測したときのデータ」で、「多数決で決めた裁決」というのが「アンサンブルから得られる統計的データ」を意味していると考えられます。なので、この教えは「全会一致の結審は間違っている」という風に解釈するのではなく、「全員一致の結果は、標本数が少なすぎる可能性があるから信用するな」という風に解釈できるわけです。

とはいえ、エルゴード仮説が成り立つには定常確率過程が必要なので、多数決の有効性を解釈するには無理がありますかね。

ちなみに、エルゴードという言葉はボルツマンによる造語で、ギリシャ語の ergon(仕事量)+hodos(経路)を語源としているんだそうです。ボルツマンの命名すごすぎっしょ。ボルツマンって名前もかっこいいし。