裏波ビードの形成

「ティグ溶接入門」(著者:横尾尚志、他、発行所:産報出版、ISBN:978-4-88318-206-0)より。

 溶接施工しながら作業者自身が裏波ビードの形成状況を直接観察するのはほとんど不可能であるが、ある程度経験を積めば、溶融池の状態から裏波ビードのでき具合を推定できるようになる。

 たとえば、

  1. まだ母材裏面まで溶融していない間は、熱膨張によって溶融池がやや盛り上がっているように見える。
  2. 母材裏面まで溶融して裏波ビードが形成されると、溶融金属が裏面に流動するので溶融池表面がやや凹んで見える。
  3. 裏波ビードが安定して形成されているときは、溶融池に比較的透明感があり、その大きさもほとんど変化しない。
  4. 裏波ビードが正常に形成されなくなったときは、急に溶融池の透明感が失われて、少し黒みを帯びたように見える。溶融池の大きさも現象している。
  5. 溶落ちが生じる寸前には、溶融池の透明感が急に増したように見え、溶融池の大きさも増加している。
などの現象が認められる。

 したがって、まず溶接開始点でトーチを静止したままルート面を裏面まで溶融し、溶融池の挙動と状態から裏波ビードが形成されたことを確認したのち、溶融池の大きさを常に一定に保つように注意しながらトーチを移動すればよい。

溶接開始点でトーチを静止して、溶融池が(1)の状態から(3)の状態になるのを待ち、(4)の状態に行く前にトーチを移動し始めるということ。これを遮光ガラス越しにやってのけるんでしょ、職人さん達すごすぎ・・・