6. 余計な修飾語をなくせ by カズオ・イシグロの父

テクニカルライティング by カズオ・イシグロの父 - imakov’s blog」で紹介した石黒鎮雄著『日本語からはじめる科学・技術英文の書き方』(ISBN 4-621-04016-2)では、不必要な語句を取り除くことを推奨している。これにはimakovも激しく激しく同意する。仕事上メーカーの技術者が作成した日本語の報告書をレビューしたり、受領した報告書を英訳して外国の研究者に提出しているのだが、そういった報告書は本当に不必要な語句が満載である。

以下の例では、下線の部分はテクニカルライティングとしては無い方が良い。

  • この要素は回路網理論でいうところの帰還ループを形成している。
  • 水圧が増加すると当然のことながら容器は変形する。
  • 理論的な意味からも限界に近づいた。
  • 更にいわばX項をその範囲に収めることを意図したものである
  • 以上のべたように・・・
  • このような短文では詳しく説明する余裕はないが・・・
  • 図にXの変化の様子を示す
  • その値は式4で与えられることが導かれる

以下に長文の例も示す。不必要な語句を取り除くことの、有益さがよくわかる例である。

  • 【ダメな原文】 垂直線が存在する場合にはこの仮定が成立せず垂直線の存在によって見かけ上の縦線群の不規則性が明瞭に現れてしまい、繰り返しによってこの不規則な縦線(以下、擬似縦線群と呼ぶ)が検出されてしまうことが判明した。これに対処するために、縦線群の基本的制約を考慮し、繰り返しの各段階で検出して擬似縦線の発生を押さえると共に、さらにこの制約にもかかわらず除去できなかった縦線群を統計的に除去する方法について述べる。

  • 【ダメな原文の不要部分をハイライト】 垂直線が存在する場合にはこの仮定が成立せず垂直線の存在によって見かけ上の縦線群の不規則性が明瞭に現れてしまい、繰り返しによってこの不規則な縦線(以下、擬似縦線群と呼ぶ)が検出されてしまうことが判明したこれに対処するために、縦線群の基本的制約を考慮し、繰り返しの各段階で検出して擬似縦線の発生を押さえると共に、さらにこの制約にもかかわらず除去できなかった縦線群を統計的に除去する方法について述べる。

  • 【修正した文】垂直線があるとこの仮定は成立せず、見かけ上の縦線群の不規則性が現れ、繰り返しによってそれが顕著になる。縦線群の基本的制約を考慮して繰り返しの各段階でその発生を押さえ、なお残った分を統計的に除く方法を述べる。