ANSYSで静止摩擦力を計算するには

ANSYSで静止摩擦力を計算するにはどうするのかを調査した。そこで、角度θの斜面に質量Mの物体がある場合というもっとも簡単な状況を設定した。

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そもそも、ANSYSでの接触の定義は5種類ある: 「ボンド」、「分離しない」、「ラフ」、「摩擦無し」及び「摩擦あり」。このうち、調査すべき接触の定義は「ボンド」と「ラフ」であった。それ以外を検討しなかった理由を、以下の表にまとめた。

接触の定義 検討しない理由
ボンド (検討対象)
分離しない 剛体移動して計算できない。
ラフ (検討対象)
摩擦無し 剛体移動して計算できない。
摩擦あり 動摩擦力を計算するため。

ということで、ボンド結合とラフ結合の条件でのANSYSの結果と理論解とを比較した。斜面の上に、50 mm角の鋼の立方体があるとし、斜面の角度を変えて計算結果を比較したのが下図だ。

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摩擦力関して青色の理論解とあっているのは、灰色のラフ結合の結果である(垂直抗力はボンド結合・ラフ結合ともに理論解と合っている)。したがって、「静止摩擦力を考慮すべき条件ではラフ結合とすべし」ということになる。

ということで、まとめるとこんな↓感じでしょうか。workbenchでは、「静止摩擦力で計算しておいて、最大静止摩擦力を越えたら動摩擦に切り替える」という計算はできないと思われる。

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